さらし者のブルース

【原詞】山口 隆二
【作詞】齊藤 清巳
【作曲】齊藤 清巳
【MIDIデータ作成協力】マルちゃん

学生たちに笑われながら
いい歳をしたベテラン機関士が
慣れない手つきで声をからして
ジュースはいかがです
みやげはいかがです
人通りはげしい駅前の歩道
折りたたみの机二つ並べて
手書きの看板に「臨時売店」
今日の売り上げは850円
 さらし者の俺たちさ
 胸をはって生きてゆくさ
 どんな仕事をしていても
 俺たちは国鉄労働者

出向命令 人ごとじゃない
次は俺だろうか 仕事はうわの空
機関士も車掌も そんな思いで
あげればきりがない 小さな事故とミス
金もうけのため 安全は二の次
物言わぬ労働者を育てるのが一番
いつか大事故が起きないように
ジュースを売りながら目を光らせている
 さらし者の俺たちさ
 胸をはって生きてゆくさ
 言いたいことも言えぬようじゃ
 この世は真っ暗闇のなか

俺たち見せしめの さらし者たちは
どんな仕打ちにも立ち向かって行く
仲間をいじめるな 安全守れ
声はり上げて立ち向かって行く
 さらし者の俺たちさ
 胸をはって生きてゆくさ
 未来は来る きっと来る
 つなぐこの手にやって来る

 さらし者の俺たちさ
 胸をはって生きてゆくさ
 どんな仕事をしていても
 俺たちは国鉄労働者


1988年7月の国鉄福井合唱団のコンサートで発表された合唱構成劇の一曲。

原詩の山口隆二は、臨時販売店に立つ青年労働者。不当な配置転換による出向命令を受けています。
その原詩の中では、「さらし者の俺たちを笑いたければ笑え」という自嘲的なところがあったものの、これでは聴く人を説得できない、ということで「(でも)胸をはって生きてゆくさ」という前向きな姿勢に推敲をしてこの曲ができています。

ところで、さらし者、といえば、昨年(H17.4.25)のJR西日本・福知山線の列車脱線事故を機会に話題になった「テンカイ」
オーバーランをした運転手に、再教育の後に、ホームの先頭に立って列車の運転手に「わたしはオーバーランをしました。皆さん、オーバーランをしないように気をつけましょう」と自分の失敗談を同僚に展開する、というもの。
これなんか、当事者から見れば「さらし者」になっている、という気持ちなんでしょうね。そういう気持ちにさせて、だからもうやらないように気をつけよう、という奮起を促すと言うことを「アホ・ボケ・カス」のJRが考えているンでしょうけど。

ところで(その2)、この「アホ・ボケ・カス」ですけど、これは、神戸製鋼ラグビー部の平尾誠二が仲間をリードする時の叱咤激励のことば。実際は、これに「死ね」が入ります。要はこの四文字熟語でコミュニケーションは足りたとのこと。選手も、こう言われりゃ「なにくそ!」って反発したんですね。
ところが、その後、全日本の監督になって、「アホ・ボケ・カス・シネ」流の指導で「明日からもう来るな!」と怒鳴りつけると、最近の若いものは、本当に来なくなってしまう、ヤワになったものだと嘆いてました、という話・・・・は蛇足です。

JASRAC情報

製作日誌:
平成18年8月13日 歌詞のみ
平成18年8月23日 MIDIをアップ
平成18年8月26日 斎藤さんご本人から、「三連音符は似合わないですよ」とのご指摘をいただきましたので、Bluesパターンを使ってましたが、ソロ部分をCoolJazz、合唱部分にSlowPopsを使ってみました。